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災害関連死「tkb」で防ぐ

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190127-00000057-asahi-soci

 自然災害が起きたときに助かった命を、その後に失ってしまう「災害関連死」。大きな要因の一つとされる避難所生活の問題点を洗い出し、より過ごしやすいものに改善しようとする動きが出ている。合言葉は「TKB(トイレ、キッチン、ベッド)」だ。


 東日本大震災では昨年9月までに災害関連死で3701人が亡くなっている。2012年3月までに死亡した1263人について、復興庁がその経緯を詳しく調べたところ、638人が「避難所などにおける生活の肉体・精神的疲労」が原因だったことが判明している。

 「安全であるべき避難所が原因で亡くなるなんてことはあってはならない。日本は多くの災害に見舞われながらも、関連死への対策は不十分なままだ」。新潟大学の榛沢(はんざわ)和彦・特任教授はそう指摘する。

 04年に発生した中越地震では、車中泊した被災者にエコノミークラス症候群が多発し、死者も出た。循環器外科医として各避難所を回ってきた榛沢さんは、その後、イタリアの地震被災地など国内外に足を運び、避難所での関連死を防ぐための研究を続けてきた。

 海外の避難所では簡易ベッドの使用が進んでおり、「1人あたり3・5平方メートル(畳2枚)の空間」「トイレを20人に1基、男女比1対3で設置」など、災害時にも人道的に過ごすための国際的な「スフィア基準」が取り入れられていた。一方、日本では関東大震災のころから今に至るまで、雑魚寝で過ごす避難所生活が100年近く続いている。

 避難所の環境を良くしなければ――。榛沢さんたちは14年に「避難所・避難生活学会」を設立。研究者のほか、避難所運営に携わる自治体や企業にも参加を呼びかけた。

 昨年には、避難所の抜本的な改善を求める提言をまとめた。特に重要となるトイレ、キッチン(食事)、ベッド(睡眠)の頭文字「TKB」を合言葉に掲げた。

 災害用のコンテナ式トイレを備蓄する▽支援物資だけの食事にならないよう、避難所で調理・提供できる体制をつくる▽冷たさや振動が直に伝わらない簡易ベッドを用意する、ことなどを求めている。

 避難所を改善する動きは徐々に広がりつつある。

 熊本赤十字病院(熊本市)とニシム電子工業(福岡市)は、太陽光で発電して排泄(はいせつ)物を浄化する移動式のトイレを開発した。最新型には手洗いや洗浄便座も備えている。

 西日本豪雨の被災地で実際に使ってもらったところ、「ストレスなく使えた」などの感想が寄せられた。熊本赤十字の曽篠(そしの)恭裕・救援課長は「普段は野外公園などで使い、災害時には被災地に持って行けるトイレを普及できれば」と話す。

 日本栄養士会は東日本大震災を教訓に、食事の力で関連死を防ぐ災害支援チーム「JDA―DAT(ダット)」を結成した。災害直後に避難所に入り、糖尿病患者やアレルギーのある人、妊産婦たちの食事を支援している。コンロや電子レンジを積んだキッチンカーも導入。お年寄り向けにおかゆにしたり、乳児のミルクをつくったりする。こうした調理法の講習も各地で開いている。

 段ボール製の簡易ベッドを導入する動きも進む。昨年は西日本豪雨や北海道胆振東部地震の避難所で使われた。生産業者と段ボールベッドの供給協定を結ぶ自治体は32道府県、約300市町村に上る。

 榛沢さんは「関連死にいたる人の何倍もの人が、環境が悪い避難所で体調を崩している。自然災害は防げなくとも、安心安全に過ごせるようにすることはできる。各団体や企業などとも協力しながら、国や自治体に働きかけていきたい」と話す。


■心のストレスに長期的なケアを

 被災による心のダメージや、避難生活から来るストレスのケアも欠かせない。

 生きている意味がない、不安で眠れない、家族が一日中、酒を飲んでいる……。2016年の熊本地震の被災者を支援する「熊本こころのケアセンター」が接してきた人たちからは、こんな言葉が寄せられている。

 熊本県のまとめでは、一昨年末までの関連死197人のうち、自殺者は16人いる。仮設住宅に暮らす被災者が今も約2万人いるなか、そのうちの9千人を対象にした昨年の健康調査では、強い心理的苦痛を感じている人が8%いた。これは何もないときの2倍の数値という。

 矢田部裕介・センター長(精神医学)によると、繰り返しの強い揺れや、身近な人を亡くしたことによる被災直後の心の傷に加え、復旧事業の忙しさや、生活再建が進まないことからくる新たなストレスを抱えてしまう。うつ病になったり、認知症や発達障害を抱えた被災者が仮設団地などでうまく適応できなかったりすることもある。

 こうした被災者に寄り添うため、阪神大震災以降、各地でこころのケアセンターが設置されてきた。熊本でも、被災者や家族らの訪問や電話での相談にのるほか、避難所をめぐる支援団体への助言や情報共有も進めている。また、被災直後から強い負担がかかり続けている被災自治体の職員の心のケアも重要な仕事になっている。

 センターでは、誰でも目にすることができるよう、くまモンをあしらった心のケアを紹介する冊子をインターネット上で公開。「十分な睡眠をとるため、夕食は寝る3~4時間前まで」「眠れないからといって酒を飲みすぎない」「笑うことで緊張がほぐれるスイッチが入る」などと呼びかけている。

 矢田部さんは「被災時にストレスを感じたり、眠れなくなったりするのは正常な反応で、多くは自然に回復する。ただ『眠れていないようだ』『口数が少なくなった』などの変化がある人がいれば、専門機関に相談するよう声かけをしてほしい」と話している。(竹野内崇宏)

朝日新聞社

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