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ユリゲラー放映 報ステに苦言

https://news.yahoo.co.jp/byline/egawashoko/20190327-00119852/

 3月25日の「報道ステーション」(テレビ朝日系)を見ていたら、ニュースの中に、突如、かつてスプーン曲げなどの芸で「超能力者」としてもてはやされたユリ・ゲラー氏の映像が出てきた。

 若い女性アナウンサーが原稿を読み上げる。

「スプーン曲げで知られるユリ・ゲラーさんが、超能力を使ってイギリスのEU=ヨーロッパ連合からの離脱を阻止すると宣言しました。現地メディアによると、ゲラーさんは、毎日、午前11時11分と午後11時11分にメイ首相にテレパシーを送っているといいます」(この日のニュース原稿は、昨日まではテレ朝のホームページに掲載されていたが、なぜか今日には本件の原稿のみが削除されていた)

 あきれ果てた。

 バラエティ番組なら、分からないではない。50代以上の芸能人が、かつてテレビでスプーン曲げやら壊れた時計を直すという「超能力」にハマった体験をおもしろおかしく語り、若手のタレントがそれをからかう、というトークが成立するだろう。

 しかし、報ステは(一応)報道番組を標榜しているのではないか。それなのに、天皇皇后両陛下が京都で即位30年を記念した茶会を開かれたことや、中3の女の子が大麻所持で逮捕された事件などと同列に、これを「ストレートニュース」として伝えるというのは、いったいどういう了見なのだろうか。

 その5日前は、地下鉄サリン事件から24年目の日だった。オウム事件で13人の死刑が執行されて、最初の3月20日。テレビ朝日でも報道したのではないか。

 オウム真理教の麻原彰晃こと松本智津夫は、空中浮揚をする「超能力者」としてメディアにデビューした。最初の著書のタイトルは、「超能力『秘密の開発法』――すべてが思いのままになる」だ。

 そして、彼が「超能力」を持つ「最終解脱者」と信じた人たちによって、一連の事件は起こされた。

 この事件を振り返る時、ゲラー氏のスプーン曲げによって「超能力」ブームを盛り上げ、さらには教団をお茶の間に広めたテレビの問題を見過ごすことはできない。テレビ朝日はいったい何を考えているのだろう、と思った。

オカルトブームの土壌を作ったテレビ くだんのユリ・ゲラー氏のスプーン曲げは、「超能力」でもなんでもない。そのことは、たとえば、安齋育郎・立命館大学名誉教授が長年、実演つきの授業や講演会で、そのトリックを明かし、手品であることを示してきた通りである(その実演は、ネットで映像で見ることもできる)

 このゲラー氏を、日本で初めて取り上げたのは、1974年3月7日、日本テレビ「木曜スペシャル」だった。スマホもネットもなかった時代。テレビは、子供たちに強い影響を与えるメディアだった。そのテレビでは、やがて、投げ上げたスプーンを空中で曲げることができるという、日本の「エスパー少年」も登場した(後にインチキであることが、週刊誌にバラされた)。

 テレビでは「超能力」のほか、ヒマラヤの雪男やネス湖のネッシーなどの未確認動物やUFO(未確認飛行物体)、古代文明の謎なども流され、オカルトブームの土壌を作った。

 この頃、小松左京のSF小説「日本沈没」と五島勉の「ノストラダムスの大予言」がベストセラーになり、映画化されて大ヒット。1974年の邦画興行収入1位と2位を占めた(ちなみに洋画のトップはオカルト映画「エクソシスト」だった)。とりわけノストラダムスはテレビ番組でも盛んに取り上げられ、子どもたちに大きな影響を与えた。

 「ちびまる子ちゃん」シリーズで知られる漫画家さくらももこさんは、当時、小学生。まる子ちゃんたちが教室でスプーン曲げに熱中する姿を描き、エッセイ集「まる子だった」の中でも、この頃の子供がいかにノストラダムスやこっくりさん占いなどに影響されていたかを書いている。

 その後麻原の弟子となり、死刑となった信者たちの多くも、同じようにこの頃、小学生から中学生だった。テレビを通じて超常現象の情報に親しみながら育った世代である。彼らが、麻原の「超能力」に警戒心を抱かず、むしろ「本物だ!」と信じ込んでしまったのは、そういう土壌があったからではないだろうか。

 テレビでは、超能力で未解決事件を解決に導くといった特集番組なども放送された。坂本弁護士一家が行方不明となった事件(後にオウム真理教によって殺害されていたことが判明)の後、一家の行方を超能力者が捜すというテレビ局の企画が、家族や所属法律事務所に持ち込まれたこともあった(もちろん断っている)。

「面白い」の罠でオウムをお茶の間に さらにテレビは、オウム真理教をお茶の間に伝える役割も果たした。まずはワイドショー。信者の親と教団幹部の対決番組を最初に放送したのはテレビ朝日の「こんにちは2時」だった。そこでオウムが事前の約束を破って、未成年の男性信者を女装させてスタジオに連れ込み、本番中に突然登場させて、生番組で親と対決させる、といった、オウムによる番組乗っ取り的なことも行われた。

 坂本事件の翌年、衆議院議員総選挙にオウム幹部が出馬すると、象の帽子や麻原の顔のハリボテなどを身につけ、「ショーコー、ショーコ-」という単調な歌に合わせて踊る信者たちの姿が、奇抜な選挙運動として画面に映し出された。教祖の妻に密着した番組もあったと記憶している。

番組で麻原が「超能力」宣言 麻原らはバラエティ番組などにも出演した。その最初は1987年5月。当時お笑い芸人だった片岡鶴太郎氏の「鶴太郎のテレもんじゃ」(日本テレビ系)が、麻原を「超能力者」として紹介した。麻原は、「シャクティパット」と称する儀式を披露し、「超能力があなたを変える」と宣言してみせた。

 やはり日本テレビ系の「とんねるずの生でダラダラいかせて!!」(同)では、とんねるずの2人とのトークで盛り上がったほか、「麻原彰晃の青春人生相談」と銘打って、スタジオの観覧者からの質問などに答えた。

 『TVタックル』(テレビ朝日系)では、ビートたけし氏が麻原と対談。麻原はたけしを「私に代わって、オウム真理教の教祖をやってもらってもいいんじゃないですかね」などと持ち上げてみせた。たけし氏は「面白いよなあ、麻原さんって」と肯定的に評している。

「面白い」からとバラエティに このような番組を制作していた1人であるテリー伊藤氏は、麻原らの死刑執行後、次のように語っている。

「空中浮遊とか、バラエティっぽいんですよ。面白いな、なんて思ってた。僕らもまさかここまで悪い人間だとは思わなくて、キワモノだと思って、バラエティには良いんじゃないかと思っていたぐらいなんですけども」(2018年7月8日『サンデージャポン』TBS系)

 「面白い」は、一種の罠でもあるのだろう。結局テレビは、麻原を変だけど面白い、無害な存在として、お茶の間に浸透させる役割を果たしてしまった。見た人の中には、いかがわしい臭いをかぎ取った人もいるだろうが、そういう人ばかりではない。

「朝生」出演で信者獲得 さらに、1991年9月には討論番組「朝まで生テレビ」に登場。麻原のほか教団幹部が揃って出演し、幸福の科学と”対決”した。しかし、幸福の科学側は教祖は出演せず、後に上祐史浩氏は「オウムの不戦勝」と振り返っている。その結果、オウムが優れているかのような印象を持ち、関心を持ち、入信してしまった者もいる。

 地下鉄サリン事件以降、オウムによる犯罪の数々が暴露された。このときには、テレビの関係者も、オウム真理教を野放しにした責任の一端は自分たちにもあると感じたのではないか。かつてのようなオカルトを現実に持ち込むような番組はなくなった。

 ただ、反省はそれほど長続きしなかったように思う。占い師をタレントとして登場させ、スピリチュアル、パワースポットなどといった精神世界的な要素を盛り込んだ番組が復活するのに、それほどの時間はかからなかった。

 それでも、バラエティ番組などの範疇で、現実とはっきり一線を引いてエンターテイメントとして楽しむのであれば、いちいち目くじらを立てるのは野暮かもしれない(でも、本当に気をつけて欲しい)。

 しかし、まさか、事実を伝える報道番組で、ユリ・ゲラーの「超能力」を、その日のニュースの一つとして取り上げるようになるとは思わなかった。

「ゲラーはエンターテイナー」だからOK? 私がツイッターでテレ朝の姿勢を批判したのに対し、在英国際ジャーナリストの木村正人氏は、「ユリ・ゲラーさんは人畜無害で、エンターテイナーです」とし、「英国は今、本当にユリ・ゲラーさんの超能力に頼むしかない危機的な状態に追い込まれているのです」と反論した。

 しかし、英国が「超能力」にすがるほど混乱しているのであれば、その現地の混乱ぶりを伝えるのが報道だろう(木村氏の原稿は、そういう趣旨の報道と理解している)。しかし、報ステのように、ゲラー氏の「超能力」宣言をそのまま垂れ流すのを、私は「報道」とは呼ばない。

 また、日本のテレビ局がゲラー氏と一緒に作り上げた、超能力ブームの影響を過小評価するのも、間違いだと思う。

 「テレビには報道、教育、エンターテイメントの要素が求められています」と木村氏は言う。その通りだろう。しかし、「報道番組」にどれほどの、そしてどのような「エンターテイメント」性が求められているのか。事実を理解するために、面白く分かりやすい解説は役に立つだろう。かわいい動物や楽しいイベントの映像も悪くない。けれども「超能力」は?

 そんな堅いことを言うな、と言われるかもしれない。けれども、あの悲劇はいきなり出現したわけではない。そこに至る経過を振り返ってみるならば、そういう”堅いこと”を言っておく必要があると思っている。

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ユリ・ゲラーが語るマイケルの真実 (後編)



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